2017/12/22・本日・『冬至』
12/22・本日・【青畝忌/せいほき】
水ゆれて鳳凰堂へ蛇の首
襖除(と)り杜鵑花(さつき)あかりに圧されけり
月下美人膾になつて了(しま)ひけり
老人の跣の指のまばらかな
きぬぎぬの灯冷やかに松江かな
秋の灯のテールランプが地に満てり
懐手して説くなかれ三島の死
隼を一過せしめて寒鴉
居酒屋の灯に佇める雪だるま
座について庭の万両憑きにけり
春空に虚子説法図描きけり
王冠のごとくに首都の冬灯(ふゆともし)
十二月二十二日。
俳人の、阿波野青畝/あわのせいほ・・・・の忌日。

1992年(平成4年)没。
享年93歳。
高浜虚子に師事。
『ホトトギス』の俳人4S(他、水原秋桜子・山口誓子・高野素十)の一人。
後に、ホトトギスを離脱し、虚子と袂を分かつ。
「かつらぎ」主宰。
昭和22年。
青畝48歳の年にカトリック入信。
虫の灯に読み昂りぬ耳しひ児/青畝
幼少より耳が不自由だった青畝は、読書に親しみ、特に『万葉集』に傾倒して感情をたかぶらせた。
この句は自らを詠んだ・・・虫の音が響く秋の夜長、読書に心が昂ぶり感情を抑えきれぬ青畝がいます。
「耳の遠い児であるといふことが、勢い、君を駆って叙情詩人たらしめた」by高浜虚子
【青畝忌】・万両忌
樅の木の伐り口にほふ青畝の忌/加藤三七子
青畝迎へ俳人協会黄泉路支部/高澤良一
青畝忌の街に聖歌の流れけり/由木みのる
青畝忌のミサに虔しみ仏徒我/吉波泡生
青畝忌の句碑守る尼と語りけり/清水早春
アッシジとモニカに祈る青畝の忌/森田純一郎
では、私の好きな青畝の句を幾つか・・・。
八方に走りにげたり放屁虫
遠花火この家を出し姉妹
病葉[わくらば]の一つの音の前後かな
葛城の山懐に寝釈迦かな
寒波急日本は細くなりしまま
伐竹をまたぎかねたる尼と逢ふ
仏教とカトリックとの渾然一体、
叙情と滑稽感・・・、
俳人としては長寿であった青畝こそが、
虚子の言うところの、
「俳句は極楽の文字」を、
極めたのではないだろうか。
青畝が奈良で創刊・主宰した俳句結社『かつらぎ』、
青畝~森田峠~森田純一郎と引き継がれ、いまなお盛ん。
俳句結社『かつらぎ』HP→【かつらぎ】