3月5日~七十二候・その7[ 蟄虫啓戸/すごもりむしとをひらく]

東山はればれとあり地虫出づ/日野草城
二十四節気の啓蟄・初候、蟄虫啓戸。
冬眠をしていた虫たちが地表に現れること。
戸(穴)を啓(ひら)いて出てくる・・・・・。
この虫は、昆虫だけではなく、蛇や蛙なども指します。

で、季語は、『地虫出づ』or『地虫穴を出る』
里山も無くなりつつアル現在、この季語の風景をいつまで見られるだろうか?
昔の人々は、雷の音に虫たちが驚いて地中から外へ飛び出して来ると思っていたようDEあります。
ゆえに、この時期の雷を、『虫出雷/むしだしかみなり』と呼んだり致します。
こつぽり[注1]の高さや地虫出でにけり/波多野爽波
地虫出て犬の鼻息受けにけり/古谷彰宏
出し穴を離れずにゐる地虫かな/粟津松彩子
蒲団叩く音を二階に地虫出づ/平本くらら
地虫出づ兵馬俑を引き連れて/望月暢孝

注1「こっぽり」
京言葉。
裏を大きくくりぬいてある、主に、少女用の下駄で、七五三などの祝い事の盛装に用いる。
また、近年は、祇園の舞妓の装いに多くみられる。
京言葉ながらルーツは関東、吉原遊郭の遊女の下駄として、底をくりぬいて軽くして用いたのが、「こっぽり」の最初らしい。
別名、ぽっくりorこっぽり下駄・・・歩く時の音に由来する。
祇園で蕩尽した爽波の想い出なのであろうか?
2020/03/05・本日【啓蟄/けいちつ】

「陽気地中に動き、ちぢまる虫、穴をひらき出れば也」
啓蟄の蚯蚓の紅のすきとほる/ 山口青邨
冬籠りをしていた虫たちが地表に這い出る頃。
啓(けい)は「ひらく」、蟄(ちつ)は「土中で冬ごもりしている虫」の意味。
実際、虫たちが目覚めるのは、平均気温が10℃ぐらいにならないと、駄目なようです。
トコロDE漢字の「虫」とは毒蛇の蝮を表した象形文字なのですヨ、昔々は、爬虫類も両生類も虫と呼んでいたんですWA。
あの名作漫画、『蟲師』の蟲と言う漢字が本来の昆虫を表す漢字であり、「虫」と区別していたのですが略字として現在は虫を使うようになったらしいです。
さぁぁぁぁぁて、どんどん気候が春らしくなって行きます、嬉しいなぁ~。
で、『啓蟄』

うごめけるかや啓蟄の土のいろ/岡星明
啓蟄の歩めば影を伴へり/村越化石
啓蟄にすこし先立つ旅の虫/亀丸公俊
啓蟄やしかと乾きし洗ひ物/三代川次郎
啓蟄の大地に杭を打つ響き/中村七三郎
啓蟄や娘を箱に入れ直し/飯島士朗

残雪・・・遠い連山にしか無い。

山々に残る雪はあくまでも白い。

残雪とは、春になっても消えずに残っている雪。
例年なら、北国や日本海側などでは、山陰、樹陰、岩陰、建物の裏などに降った雪が幾日も消えずに残っております。
が、しかし、異常な暖冬のお陰で、雪はどこに残っておりませんわぁぁぁ、本来は、残雪の期間が相当長いんですけどネ~。

で、雪形とは、高い峰々の雪が解けて残雪と岩肌が描き出す模様のことデス。
かつては山の雪の解け具合を表す雪形が田植えや種蒔きの時期を知る目安であったりして農時暦の役をはたしたりもしていました。
春が進 んだ頃、遠くの山肌に残っている雪が輝いているのは、なかなか良いものですがネ~。

残雪やごうごうと吹く松の風/村上鬼城
残雪や小笹にまじる竜の髯/芥川龍之介
残雪に灰うち捨てし曇りかな/佐藤紅緑
残雪に月光の来る貧乏かな/小川双々子
