天牛(かみきり)も見なくなった。

髪切虫(かみきりむし)と書くのが普通。
カミキリムシ科の甲虫の総称で、種類はメチャクチャ多い。
確かに髪の毛くらいは平気で噛み切ってしまいそうなアゴだっ。
天牛はチャイナ名だが、俳句ではこちらをヨク使う。
樹木に穴を開けて荒らす害虫だが、人畜無害であります。
代表者は、胡麻斑天牛(ごまだらかみきり)でしょう、とにかく目立つ(笑)。

捕まえると、キイキイ、ギイギイと甲高い声で鳴くので煩くてスグに捨ててしまう。
天牛のギイギイ声を闇に投げ/小栗釣月
ただ、ヨク見ると悪役の覆面レスラーみたいで、カッコ可愛い。

また形も良い、近年は、私のトコのようなド田舎でもほとんど見かけない。

楔形文字天牛が紙の上/岡井省二
児は眠り天牛鳴くよ籠の中/田中藤穂
灯を恋うてきし天牛が頭振る/木下節子
天牛のひたすらわれに物言ふか/和田悟朗

髪切虫もらひ少年素直なる/河井富美子
エナメルのごとくかがやく髪切虫/木田花耶
髪切蟲十日月夜に蒼みさし/市場基巳
名ヒール髪切虫の暴れ顔/小栗釣月

日本海の鯣烏賊(するめいか)旨し。
船縁の修羅場は見えず烏賊釣火/柳井満智子

スルメイカ、鰑烏賊、寿留女烏賊とも書く、夏の季語。

真烏賊、槍烏賊とも同様に、烏賊全般は、夏の季語となっている。
日本近海で獲れる烏賊の種類は、なんと八十種を数えると言う。
その中で最もポピュラーなのが初夏から真夏にかけてが旬のスルメイカ(あたりめ)だっ。
この、スルメイカ、一番旨い食べ方は、烏賊の中で最も豊富だと言われる肝をタップリ使った塩辛であろう。
また、初夏のスルメイカの小さいモノをムギイカと言うらしい、それを煮付けにする。
麦烏賊、麦藁蛸、麦藁鶏魚と同様の意味だろう。
麦烏賊の墨吐き潮のよよ青し/田中冬二
さらに、もう一つ、北海道発祥と言われる沖漬だ、これがとても旨い。
烏賊釣船に乗せた醤油ベースの漬け汁の樽に、海水を吐かせた生きたままのスルメイカをぶち込むのだ。
それを数日冷凍して寝かせ、三分ほど解凍したら輪切りにして食す、冷酒と合わせると格別でアル。

もちろん、スルメも美味しいけれどもネ。
学生時代に何度か佐渡にキャンプへ行った。
佐渡で一番美しいと思ったのは、碧い海でも、満天の星でもなかった。
入日の頃出航するイカ釣船が沖合いに並び点燈する夕闇だ。
佐渡おけさ踊るうしろの烏賊釣火/影島智子
佐渡七里烏賊の来ている風の色/多賀啓子
黄昏の佐渡と混じりて烏賊釣火/小栗釣月


そして、必ず早朝の港に赴きイカ釣船の帰港を待ち・・・『すいません~、イカを売って下さいぃぃぃぃ』と、叫ぶのだ。
本より、買う気などないのでアル(笑)、漁師は・・・「ただでやるからもっていけぇぇぇぇ」と、烏賊を十杯ほど投げてよこす。
ゆえに、その日は朝から日本酒で、烏賊パーティーとなるワケだ、アハハハハ、良い思い出です。
サザエやアワビも豊富に獲れた。
あの佐渡の海は今でも変わらないのであろうか・・・。
で、鮑の話しは明日(6月25日)の予定ネ。
ひとときは烏賊釣の火のうるみもし/原石鼎
ゆふづつの如くにとほき烏賊火あり/大星たかし

一夜干し烏賊のカーテン風岬/高澤良一

ボジヨレーヌーボー烏賊墨和へのスパゲッティ/佐藤喜代子

煮れば和す大根の色烏賊の色/谺ひろひこ

烏賊釣り=夜のイメージであるが、近年は新型の機械?により昼の漁が多いらしい。
機械の名前は『イカロボ』と言うらしいが・・・やはり烏賊は夜釣りが風情がアルけどなぁ。
昼顔も可憐ですなぁ~。
「ひるがおやどちらのつゆもまにあわず」

昼顔の蕾がうしろ指をさす/丸山佳子
昼顔、夏の季語です。
朝顔と同じく朝に開花しますが、昼になっても花がしぼみません。
昼顔と言う名前ですが、昼に咲くわけではないのであります。
また、地下茎で増え、一度増えると駆除が難しいため、なんと雑草あつかいでございます、可哀想ね。
確かに咲き過ぎですね、あっちゃこっちゃで咲いておりますわ。
浜辺に群生しているのは、浜昼顔でございますヨ。
浜昼顔は機会があれば詠んで見ますね。
私は、食べたことはないですが、花や蕾は食用であり、
アクもほとんど無いために、珍しい生食の花でもあります。

昼顔やこの道唐の三千里/与謝蕪村
昼顔に浜いくたびの砂あらし/岡本眸
いつぱいの風昼顔に沖の帆に/小田司
晝顔や刃毀(はこぼ)れの濤音に出て/中原道夫
昼顔よわれ遠投をくり返す/宮崎斗士
昼顔は誰も入れぬ母の部屋/鳥居真里子
昼顔や風紋あらき親不知/横田和
晝顔の昼の顔には騙されぬ/小栗釣月
