秋のホタル。
本句には「芥川龍之介氏の長逝を深悼す」の前書がある。
「深悼」は、人の死をふかく嘆き悲しむこと。

螢籠秋の螢となりにけり/小澤實
夏の蛍が秋になっても生きている。
命の強さと悲しさと季節の行き合いを詠った。
己が灯を鎮め浄土へ秋蛍/小栗釣月
蛍は自分の命の灯を自分で消して、極楽浄土へと身罷る。
秋の蛍は儚げで悲しい。

秋蛍、生死と哀愁を含んだ季語。

死ぬるとも居るとも秋を飛ぶ蛍/川井乙州
牛の尾にうたるる秋のほたるかな/夏目成美
秋蛍闇より黒き手が掴む/角川春樹
ゆらゆらと秋の螢の水に落つ/寺田寅彦
瀬をのぼるうすきひかりの秋螢/石原八束
それとなき別れの文や秋螢/橋場きよ

連衆とは三世の契り秋蛍/小栗釣月
【親子は一世、夫婦は二世、主従は三世】
連衆と主従とはいささか違う向きもアルが、先輩後輩、指導する側される側と考えると主従に近いのではないか、と。
俳句仲間と音楽仲間とは来世があるならばまたお付き合い願いたいものである。
我が、俳句の師匠とギターの師匠とは、現世において、はて?何度目の出会いなのか(笑)。