10月03日~七十二候・その48[水始涸/みずはじめてかるる]
10/03・本日・【蛇笏忌】です。

をりとりてはらりとおもきすすきかな
芋の露連山影を正しうす
父祖の地に闇のしづまる大晦日
ながき夜の枕かかへて俳諧師
秋たつや川瀬にまじる風の音
春めきてものの果なる空の色

本日、十月三日は、飯田蛇笏/いいだ・だこつの忌日です。
別号、山廬(さんろ)。
五人の男児うち、次男が病死、長男・三男が戦死・・・四男の龍太が家督を継ぐ。

1885年4月26日~1962年10月3日・享年77。
高浜虚子に師事。
大正期の「ホトトギス」の代表作家。
後に、俳誌『雲母』を、創刊、主宰。
『雲母』は、蛇笏の没後三十年を期に92年に終刊。
1967年に蛇笏の功績を称え、角川書店が『蛇笏賞』を創設。
俳句界では最も権威のある賞で、俳句界の芥川賞とも言われ、現主催は角川文化振興財団。
毎年六月に優れた句集に授与(令和二年・現選考委員は、片山由美子、高野ムツオ、高橋睦郎、長谷川櫂)。
本年、「第54回 蛇笏賞」の受賞者は、柿本多映女史、柿本多映俳句集成にて。
蛇笏の近代俳句に与えた影響は、まさに限りなし・・・大好きな俳人の一人です。
「芥川龍之介氏の長逝を深悼す」自殺した芥川に詠んだ句も有名です。
~たましいのたとえばあきのほたるかな~
山本健吉[評論家・俳人石橋秀野の夫]曰く、
俳句としての格の高さと正しさという点において、「4S」や新興俳句運動以後の俳人を含めても、ついに右に出るものは見当たらぬ・・・と、手放しの賛辞を贈っている。
俳句を志すもの、蛇笏の句を読まずして、誰の句を読むのか、と、言いたいのです・・・。
蛇笏、あまりにも偉大なり・・・、畏怖の俳人であります。
蛇笏の句を読むと、懐かしい自然を追憶の中に感じるのです。
私たちの実生活がどんどんと自然と離れて行く・・・必然、しかし、
愚かしくも、懐古的と謗られようと・・・私は言いたいのです、自然万歳と。
ただ、ややホトトギス至上主義の感は如何なモノか?
【蛇笏忌・山廬忌】
蛇笏忌の岩うつ滝の音聞ゆ/飯田龍太
蛇笏忌や奥嶺の雲に炎走る日/角川源義
おのづから言霊韻く山廬の忌/荒井正隆
蛇笏忌やどすんと落ちて甲斐の柿/秋元不死男
蛇笏忌の夜の底ひの露の群/石原八束
蛇笏忌ともなく山の澄み川の澄み/森澄雄
蛇笏忌や露けきものに斧の柄/鷹羽狩行
蛇笏忌の湖が暮れんとして騒ぐ/平松良子
蛇笏忌や海鳴り低く日本海/小栗釣月
では、蛇笏の句を少々。
風鐸のかすむと見ゆる塔庇
朝日さすすだれの外の岩清水
打水のころがる玉をみて通る
案山子たつれば群雀空にしづまらず
桑の実に顔染む女童にくからず
わらべらに天かがやきて花祭
ありあけの月をこぼるる千鳥かな
わがこゑののこれる耳や福は内
凪ぎわたる地はうす眼して冬に入る
是非、蛇笏の句集はお読み頂きたい。