10月08日~七十二候・その49[鴻雁来/こうがんきたる]

明け暮れの朝霧隠(ごも)り鳴きて行く雁は我(あ)が恋妹に告げこそ/詠み人しらず
雁のこゑすべて月下を過ぎ終る/山口誓子

二十四節気の寒露・初候、鴻雁来。

雁は万葉の頃は「かり」と、室町時代から「がん」と呼ばれた。
なので、「かり」でも「がん」も良いのです、他、「かりがね」とも・・・。
「雁(かり)が音(ね)」=「雁の鳴く声」もそのまま名称になったのです。

母恋ひの若狭は遠し雁の旅/水上勉
亡き兵の妻の名負ふも雁の頃/馬場移公子
千の雁の千の声きく倶会一処(くえいっしょ)/佐藤国夫
雁や酒もて男みがくべし/西川五郎
雁の聲どこぞに落ちし刺さるかに/中原道夫
古利根へつなぐ渡船も雁のころ/藤井昌治
煙突の吐く湯煙や雁の声/小栗釣月

その年に、初めて渡って来る雁を、初雁と言います。
雁も燕と、架空の常世の国から来たのだとして、昔は縁起がよいと言われたようです。
*倶会一処~浄土教の思想、浄土宗・浄土真宗・時宗など。
浄土系の根本経典である浄土三部経の一つ『阿弥陀経』の一説による。
極楽浄土に往生した者は、浄土におわす仏や菩薩と一処にて倶会(必然的に出会う)との意味。
本日・2020/10/08・【寒露】

二十四節気・その17・寒露。
「陰寒の気に合って、露むすび凝らんとすれば也」

寒さが本番を迎えるちょっと前、朝晩にささやかな冷気を感じます。
野の草木や花にまとわる露が、冷気によって霜に変わり始める頃ですネ。
野山が色づき鳥がわたる、秋天の爽やかな空を仰ぐ日々は至上の喜びです。

『寒露』
露虫の葉にすがりをり寒露の日/神藤伝
熱き茶を旨しと思ふ寒露かな/飯田美千子
杉を挽く香のただよへる寒露かな/根岸善雄
寒露てふ膝の痛みの呼ぶ日かな/藤井晴子
調律の音の澄みきし寒露かな/乾フジ子
茶柱の立つて嬉しき寒露かな/小栗釣月

さて、『女心と秋の空』、実は、昔は、『男心と秋の空』だったらしい(笑)。
いつ代わったんだ?確かに、女より男の方が揺れやすいWAなぁ~、と(笑)。