梅シリーズ3・紅梅。

「白梅」よりも、やや遅咲きの「紅梅」。

古人は繊細な紅梅の遅速を愛した。
ゆえに、平安期の『和漢朗詠集/藤原公任』において、
他の梅と紅梅とは、キチンと区別されているのでア~ル。

また、「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿、柿折らぬ馬鹿」とも・・・。

紅梅やけふは涅槃に香をさヽげ/杉山杉風
紅梅や雨のふりたるぬり盥/夏目成美
紅梅やひらきおほせて薄からず/睡闇
紅梅や鳩ほくほくと甃(しきがわら・敷瓦)/川端茅舍
紅梅や病臥に果つる二十代/古賀まり子
紅梅や若く野蛮な娘達/小栗釣月

紅梅や一人娘にして凛と/上野泰
瞑れば紅梅墨を滴らす/角川春樹
白板をツモると紅梅がひらく/金原まさ子
紅梅のゆるく始まる和音かな/宮本佳世乃
紅梅や夜待たずして閨に入る/小栗釣月

2月23日~七十二候・その5[霞始靆 /かすみはじめてたなびく]

森霞む日付けの赤き日曜日/櫛原希伊子
二十四節気の雨水・次候、霞始靆。
春霞などと言いますが、『霞』単独でも春の季語です。
「霞/かすみ」は明るい間のみに使い、夜になると「朧/おぼろ」となります。
霞と朧に見え隠れする花鳥風月・・・たまりませんなぁ~、美しい。
ちなみに、春は霞ですが、秋は霧となります。
霞はたなびく、霧は立つ、であります。
春の霞は、軽く・暖かく・柔らかく、「たなびく」のであります。

では、『霞』。
われは恋ひきみは晩霞を告げわたる/渡辺白泉
平家村霞の中を耕すか/笹倉さえみ
安房を見せ伊豆は隠して春霞/鷹羽狩行
山彦を眠らすほどに霞みけり/佐々木東道
弟と日暮れを立てば鐘霞む/柴崎七重
夕暮れの母泣く丘の霞けり/小栗釣月
