流し雛・雛流し。
ひ孫抱くことなき母へ流し雛/小栗釣月

雛祭は女の子のお祭、女の子の息災を祈る行事。
その女の子のすべての禍と厄を飾った雛人形に移して、いわゆる依代(よりしろ・憑代)とした。
ゆえに、三月三日の黄昏時には、その依代たる雛人形を川や海へ流したと言う・・・。
「流し雛」、別名、「捨雛(すてびな)」とも言った。
人の形をした依代を流すワケだから、少し哀しくヤヤ残酷な風習と言えなくもない。
幼き手離してならぬ流し雛/小栗釣月

伏すは嘆き仰ぐは怨み流し雛/岡本眸
年ごとに異なる別れ流し雛/内藤三男
人ごゑも流れゆくなり流し雛/鈴木順子
流し雛生まれかはりて我がもとに/江島照美

流し雛・・・ある時は笑いであり、またある時は慟哭であろう。

流し雛面ざしのみな不憫なり/水野節子
今いちど髪を撫でやる流し雛/岩崎皓子
野の花を添えてやりけり流し雛/高橋照葉
うつし世の修羅たづさへて流し雛/松村多美
フクシマへ風の流るる雛流し/小栗釣月

下鴨神社の流し雛が一番有名かしらネ。



参考、源氏物語・須磨の巻。
~上巳の祓と嵐~~
弥生(やよい・旧三月)の上巳。
陰陽師を呼んでお祓いをさせ、舟に大げさな人形を乗せて流した、とあります。
まさに、流し雛の事を言っているのであります。
「知らざりし大海の原に流れ来てひとかたにやはものは悲しき」
との歌が添えられました。
今も昔も、願いは一つ。
無事に育って欲しいの一念であります。
三月三日・本日、桃の節句・・・お雛様です。

上記の句は、『奥の細道』の出発前に、自宅[芭蕉庵]を他人(女の子のいる家族)に譲った時に詠んだ句デス。
私も娘達が幼い日には、お雛様を飾り雛祭をしたものです、とても懐かしいです。


さて、雛祭の必須アイテムと言えば?
白酒・菱餅・雛あられ・ちらし寿司・蛤のお吸い物がTOP5ですね。
白酒は、『桃花酒/とうかしゅ』の代用です。
本来は日本酒(たぶん当時は濁酒だったのでは?)に桃の花を浮かべます。

菱餅は、菱の実を形どったようです、そして、菱の繁殖力にもあやかりたい?
三色の意味はザックリ、ピンク(桃・太陽・魔除)、白(雪・純白・浄化)、緑(蓬・大地・生命力)です。

雛あられは、江戸の庶民に雛祭が普及した時、菱餅を外で食べる為に砕いて持っていったのが由来らしいです。
関西と関東でとは、雛あられが違うんですよ~、味も形も?らしいですね。
また、色も三色と四色(四季を表している説も有)があるんです、詳しくはググッてみましょうね~。

ちらし寿司も、関東と関西では違うんですね~。
私たちの先祖は、梅、桃、桜の時期に海や山へ行って食事をするという風習が古くからありました。
それは旬の食材、旬の命を食すことで自然のエナジーが体内に入って健康になると信じられていたからではないでしょうか?
だからちらし寿司は具沢山なんですよね。

最後に、蛤のお吸い物。
ハマグリの貝殻は一対になっていて、決してほかの貝殻と合いません。
必ずピッタリなので平安時代には「貝合わせ」遊びにも用いられました。
ゆえに、生涯一人の人と添い遂げる+夫婦和合=子沢山・・・どんだけ産めば???
う~ん、昔は幼くして大勢の子供が死んだんだよね。。
なので、とにかく子供をたくさん産むことが大切だったのですヨ。

ちゝはゝのある子の幸や雛祭/高橋淡路女
つかの間の家族の揃ふ雛まつり/辻俊子
ひらがなでおひなまつりに誘はれし/木村茂登子
ぬひぐるみ・こけしも加へ雛祭/赤木亜華里
髪止めの蝶やいちごや雛祭/服部早苗
退院し旧暦こそは雛祭り/三橋早苗
ぽつてりと白雲一つ雛祭/中野京子
セロファンのかなしき音や雛祭/矢島恵
初雛を飾り初児を前に置く/鈴風まさこ
薄紅の吾子のくちびる雛祭/小栗釣月

3/3・桃の日。

春の色と言えば桃色でしょう、万葉の時代から桃の花が咲くと一番喜ばれたようです。

桃の花はヨ~ク見ると、梅や桜よりもずっと華やか艶やかで色っぽい、そして春の花らしい優しさがある。

早春にたくさんの実を結ぶ桃の花、古から多産と生命力の象徴であったようです。
女の子が健康で元気に育ち子宝に恵まれ、そして子孫が御繁栄スル事を願ったのでしょう。

葛飾や桃の籬(まがき)も水田べり/水原秋桜子
喰うて寝て牛にならばや桃の花/与謝蕪村
金貸してすこし日の経つ桃の花/長谷川双魚
桃咲いて五右衛門風呂の湯気濛々/川崎展宏
桃の花竿が布団にしなひつゝ/須原和男
さつきまでマラソンコース桃の花/峯尾文世
妹に口で負かされ桃の花/大原教恵
育てしは男の子ばかりや桃の花/小野久仁子
三姉妹ならぬ悔しさ桃の花/小栗釣月
