芽シリーズ6・薔薇の芽。
うりずん。
うりずんの乾きて蟹の高あるき/山城光恵

【うりずん】・うりずん南風(ばえ・はえ・べー)、春の季語。
沖縄の春分から梅雨入りまでの時季。
「潤い初(そ)め」が変化したとの説が有力。
うりずん南風新書の並ぶ那覇の駅/小栗釣月
うりずんやクリームソーダ色の海/小栗釣月

「天地潤い、物皆芽ぐみ、生命の溌剌として勢い出すこと、或はその頃うりずんという」
うりずんの雨も嬉しくはなと蝶/小栗釣月

沖縄の春は魁です、【うりずん】、花曇をイメージすればよいか?
うりずんの夜雨時どきよ違がぬ苗代田の稲の色の清らさ(琉歌)。

うりずんの陽の弾き出すさざれ石/島袋佳泉
葬列もうりずん南風も浜づたい/三浦加代子
うりずんの少年池の大魚釣る/棚原節子
うりずんやこころになぞる句碑の文字/矢野野暮
うりずんの二夜がかりの擬似餌針/進藤一考
蜑(あま・海女)ら皆うりずんの砂深く踏む/平本魯秋
うりずむや黒潮匂ふ畠を打つ/神元翠峰
うりずんの空に重たき船の笛/山田静水
うりずんと三回唱ふ一人旅/小栗釣月

蛤。
蛤のすまし汁・・・旬を食すのは、贅沢の極み。

今ぞ知る二見の浦の蛤を貝合とておほふなりけり/ 西行法師
蛤のふたみにわかれ行く秋ぞ/松尾芭蕉
蛤のひらけば椀にあまりけり/水原秋櫻子

さて、蛤を代表とスル二枚貝は、他のものとは合わないことから、
末永い幸せを願う夫婦の縁に重ねて、婚礼や雛の節句などの細工、
貝合せ(平安時代から伝わる日本の遊び)や、薬・化粧入れにも用いられた。

蛤汁のほどのにごりのよかりけり/能村登四郎
シゴトノハナシ蛤のすましかな/常田創
はまぐりのとうとう白状せぬ一個/村田冨美子
白濁の蛤汁や宴半ば/宇治重郎
蛤汁のにごり礁に雨降れり/中尾杏子
蛤をおさへて椀を傾けし/須原和男
蛤汁の春の濁りを啜るなり/小林鱒一
汐とばす蛤すぐに売り切れし/池田かよ
蛤を焼き夕ぐれを愉しめり/太田土男
蛤の法螺吹くままに焼かれけり/小栗釣月

蛤や鳴かねば舌をちょんぎるぞ/小栗釣月
*秋の季語・雀海中に入って蛤となる*