9月28日~七十二候・その47[蟄虫坏戸/むしかくれてとをふさぐ]
みのむしの音をききにこよ草の庵/松尾芭蕉
枕草子では、秋風吹けば父恋しと蓑虫が鳴く(泣く)と・・・。
この話から「蓑虫」は秋の季語に、秋に蓑を作るセイもあるか。
二十四節気の秋分・次候、蟄虫坏戸。

虫達が冬眠の準備をはじめる頃。
啓蟄の初候「蟄虫啓戸 (すごもりのむしとをひらく)」と対になっています。
で、枕草子の蓑虫が鳴くの続きですが、蓑虫には発声器官などはナイ、ゆえに本当は鳴かないわけだっ。
では?どの虫と誤解されたのか?と言う事なんですが、通説ではカネタタキの鳴き声と言われていますが、さてさて。

蓑虫の父よと鳴きて母もなし/高浜虚子
鬼の子に虚子一行の立ちどまる/岩永佐保
糸長き蓑虫安静時間過ぐ/石田波郷
蓑虫や天よりくだる感嘆符!/小沢信男
落日に垂る蓑虫に刺客の目/千代田葛彦
蓑虫を無職と思う黙礼す/金原まさ子
蓑虫の泣き声待って陽の暮るる/小栗釣月

え~、春、蓑虫のオスは羽化して蛾となり、蓑を離れますが、メスは一生を蓑の中で過ごしヤス。
近年では絶滅危惧種に指定されていますネ。
秋夕焼(あきゆやけ)。
秋夕焼芯はまつくろかもしれぬ/夏井いつき

秋夕焼お伽噺の続きかな/小栗釣月
日本は童話の國よ秋夕焼/小栗釣月
昔々あるところに秋夕焼/小栗釣月
夕焼け小焼けで日が暮れて~♪
夕焼け小焼けの赤とんぼ~♪

我が胸に鉛の矢あり秋夕焼/小栗釣月
智恵子抄ひらけば淡き秋夕焼/小栗釣月

夕焼けは、本来、夏の季語。
ただ、私は秋の夕焼けが好きだ。
それは、母を偲ぶ、と言うコトなのだろうなぁ。

秋の日の暮れ方は、寂しい。
そして、この雪国では厳しい冬を間近に連想させる。
一日毎に朝夕の寒さが増すこの時期、人は暖かいモノを求める。
それは、酒であったり、想い出であったりするのだ。
ゆえに、秋は家路を急ぐ、しかし、もう母はいません。
両親が健康で元気な人が一番羨ましいと思う・・・、秋です。

鳩小屋に秋夕焼を賜はりぬ/石田波郷
秋夕焼旅愁といはむには淡し/富安風生
招かれて秋夕焼の畳かな/岸本尚毅
鷺たかし秋夕焼に透きとほり/軽部烏頭子
秋夕焼け母のなき子のやうに去ぬ/池之小町
秋夕焼わが溜息に褪せゆけり/相馬遷子
校歌まだ歌えるふしぎ秋夕焼/渡邊禎子
チャルメラの笛の過ぎ行く秋夕焼/小栗釣月

おふくろの味を忘れて秋夕焼/小栗釣月
本日、九月二十七日、竹内結子さんの一周忌。

1980年4月1日~2020年9月27日
今夜は、
『いま、会いにゆきます』

『サイドカーに犬』

を、観て泣きます。
あ~、姫川玲子シリーズの新刊がまだ読めません。

だって、姫川は、竹内結子さん以外考えられないじゃないですかぁ~(涙×涙)。

彼女のエピソードはあまりに多い…、で、一つだけ。
主演映画「黄泉がえり/2003年」

この映画は、阿蘇で撮影されました。
その縁で、竹内さんは、熊本地震(2016年)の被災地への支援をすぐに申し出たと言います。
毎月かなりの金額の支援を行い、亡くなった月にも、その支援金が振り込まれていたそうです。
そんな人なんですよね(涙×涙)。
シクシク。
今夜は、貴女の為に、Frédéric Chopinの「Étude op.10 nº3」を弾きましょう♪
合掌。
野分Ⅱ+颱風(台風)。
9/26・本日・【秀野忌】
夏の月肺壊[く]えつつも眠るなる
蝉時雨子は担送車に追ひつけず
短夜の看護り給ふも縁かな
子にうつす故里なまり衣被
鐘鳴れば秋はなやかに傘のうち
ゆく秋やふくみて水のやはらかき
本日、9月26日は、石橋秀野(いしばしひでの)の忌日です。

*1909年2月19日~1947年9月26日*
与謝野晶子に短歌を、高浜虚子に俳句を学ぶ。
文芸評論家、山本健吉(俳号竹青)と結婚。
戦時中の疎開生活中に病に侵され、昭和22年(1947年)9月26日、京都宇陀野療養所にて39歳の若さで死去。
死後1949年(昭和24年)に刊行された句文集『櫻濃く』は有名。
【秀野忌】
秀野忌のいとヾも影をひきにけり/石田波郷
秀野忌の秋冷触るる薔薇の白/西島麦南
秀野忌の月をひとしづくと数う/橋本喜夫
秀野忌や秋の螢を病むといふ/石川桂郎
秀野忌より波郷忌までの山の色/西田もとつぐ
秀野忌や袂を過ぐる雅び言/小栗釣月
美人薄命ですね。
「俳句なんどなんのためにつくるのか。
飯の足しになる訳ではなし、色気のあるものでもなし、
阿呆の一念やむにやまれずひたすらに行ずると云ふより他に答へやうのないものである」
鳥が鳴く吾妻秋草恋ひ泣きし/山本健吉
*妻の秀野の追悼句会での健吉(四十一歳)の一句。