木の実。
木の実落つ来世は君とまた逢はむ/保坂加津夫

ブロンズの少女が弾く木の実かな/山本菫

俳句的「木の実」とは、果樹を除いた、栗・樫・椎・榧(かや)・橡(とち)などの団栗の総称デス。
お祖母ちゃんが椎の実を炙ってくれたなぁ、美味しいんだよね。
木の実炒るくるくるくると魔法陣/小栗釣月

団栗・・・懐かしい響きをもつ、私には魔法の言葉(笑)。
そして、木の実は秋らしいノスタルジックな季語でもあります。
野良猫のベンチに落ちる木の実かな/小栗釣月

トトロのセイもあるか(笑)。

保育園でトトロの主題歌、【さんぽ】を演奏したのはいつだったかなぁ。

では、トトロ風?イメージの句をいくつか。
三輪車いったり来たり木の実降る/石原勢津子
強風にドレミファソラシド木の実落つ/行則ミヤ子
九九唱ふ二年一組木の実降る/熊谷尚
逆上がりできて木の実をこぼしけり/桑原立生
木の実落つ一二三四(ひいふうみよう)あとは風/水井千鶴子
好きな娘(こ)の掌(て)の中にある木の実かな/小栗釣月

読みは「きのみ」でも悪くは無いのですが、俳句では、【このみ】が一般的でしょう。
【木の実(このみ)】、秋の季語です。
傍題は、木の実落つ、木の実降る、木の実雨、木の実拾ふ、木の実独楽、万(よろず)木の実、など。
よろこべばしきりに落つる木の実かな/富安風生
風生曰く、人間でも動物でも植物でも、本当に愛情を持って見つめる人にしか本当の顔を見せない、と。
当時、大評判になったこの句を、「ホトトギス」を破門になったばかりの杉田久女がアタマに来て詠み返します(笑)。
「喜べど木の実もおちず鐘涼し」デスと・・・いやはや、やるものですね。
木の実の句は、ユニークな方が楽しくて良いなぁ。
あんまりメルヘンチックなのも如何かとは思うのですがね。

星の子の言葉遊びの木の実降る/小澤克己
木の実落ち幽かに沼の笑ひけり/大串章
布団より転げ落ちたる木の実かな/白濱一羊
ちから抜く森よいずこも木の実降り/花谷和子
ポケットの木の実で遊ぶ待ちぼうけ/有賀昌子
スタートは木の実森の音楽祭/小栗釣月

木の実落つ囁く愛に照れながら/小栗釣月
少女がそっと隠れても木の実落つ/小栗釣月

昔、娘達と木の実を拾ったエリアは、現在、【熊注意警報】発令中。
近づけません(笑)。
大声の木の実数へる姉妹かな/小栗釣月

百舌(鵙)・その二。
鵙の声かんにん袋破れたか/小林一茶

鵙は気性の荒い鳥ですね。
早朝から、キーッキーッかなり苛立って鳴きます。
まぁ、そうですよね。
鵙にしてみれば国境防衛戦ですからね。
高鳴きはだいたい9~11月頃。
越冬の為の縄張り争いで、縄張りを確保した後に単独で過ごします。
鳥では珍しくメスもこのバトルに参加します、雌雄平等なのです(笑)。
そして、翌年の二月頃その場所で繁殖して、四月頃には雛が巣立ちます。


鵙の句。
圧倒的に朝が多いですなぁ~。

朝鵙や昨日といふ日かげもなし/林翔
早ミサへ急げば鵙の高鳴けり/景山筍吉
百舌一声ビル解体の朝は明く/佐藤洋子
朝霧の晴れゆく百舌の一声に/久永つう
百舌鳥一声海峡朝の灯を落とす/碇天牛

里山の鵙の猛れば猫さかる/小栗釣月
山の主上機嫌なり鵙日和/小栗釣月
神の居ぬ杜(もり)を無尽に百舌高音/小栗釣月
神木の紙垂(しで)震わせて百舌高音/小栗釣月
夕百舌の畳み掛けたる夕薄暮/小栗釣月
またしても百舌に論破されしゆふべ/小栗釣月

長い間謎とされてきた、鵙の早贄。

近年の鳥類学者の研究で食料の貯蔵の為の行動だと判明しました。
干からびてるから、それはきっと鵙が忘れているんだよ、説が有力でしたが(笑)。
追跡調査の結果、冬場にチャント食べているんだそうです、保存食なんです。

面白いデータがあります。
早春の鵙の恋の季節。
早贄の多い鵙がモテるんだそうですよ。
早贄=財力と言う事でしょうか(笑)。
さらにに早贄が多いオスの方が声も良いとか(笑)。
また、早贄は、雛の離乳食にもなるんですね~。
巣立ちした鵙の子は自分で早贄を探して食べるんですよ。
いやいや、驚きです。

子に遺すものとてわづか鵙の贄/藤井昌治
十字架のイエスもかくや鵙の贄/鷹羽狩行
鵙の贄埴輪口して天仰ぐ/森下康子
鵙の贄ここからは野のはづれなり/豊田都峰
猫どもの羨望なりしや百舌の贄/小栗釣月

明日はハロウィン。
令和四年十月、【俳句愛好会・幹】今月の句、落掌致しました。
十一月七日は立冬ですね。
今週も寒い、冬が近いですね。
冬隣と言う季語を実感する今日この頃です。
連衆の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
互いに無理せず、ゆっくりと、冬の準備をはじめましょうね。
さて、今月の俳句愛好会『幹』の兼題は、『桃』でした。
他、秋の季語で自由題。

投稿いただいた会員の皆さんへの、添削&アドバイスは随時。
会報は十一月十日ごろまで送付します。
尚、次回の兼題。
冬の季語にしようかとも悩んだのですが・・・。
肌寒い時は暖かい日本食が良いです。
おでんや鍋には、お酒がつきものでは(笑)?


もちろん、お刺身だってネ。

と、言う事で・・。
晩秋の季語、『新酒』とします。
たくさん飲んで詠んで下さいませ(笑)。

新穀(新米)で作られた清酒が新酒デス。
『新酒』の傍題は、今年酒・新走(あらばしり)・早稲酒・利酒(ききざけ・聞酒)・杉玉(酒林)、など。



今回はお酒を飲めない人は不利ですね。
ごめんなさい。
日本酒ダメ派けっこういるんですよね~。
そんな人は自由題でお願いしまぁぁぁぁす。

それでは、例題です。
征く君に熱き新酒とおぼえけれ/石橋秀野
詩歌句で【征く】とあれば戦地か旅と言う事になるのだが・・・。
この作品は、昭和十八年作、秀野の連衆である石田波郷の入隊前日の句です。
連衆が集い別れを惜しんだ・・・昭和十二年波郷が主宰・創刊した「鶴」に秀野も参加しています。
昭和十五年新興俳句弾圧事件があり、翌年の十六年には太平洋戦争開戦。
日本が暗黒の時代へと舵を切った背景を思うと切なくなります。
必ず生きて帰ってきて欲しい・・・痛切な願いが込められている一句です。
蔵めぐり主自慢の新走り/ 田中敬
新走り、とは?
その年の新米で最も早く醸造した酒。
もしくは、最初に市場に出た新酒の事を言います。
昔は、寒造りはほとんどしませんでした。
昔は、新米が穫れると、即酒に醸造しました。
ゆえに、「新酒」は、秋の季語となっているのです。
現在のように寒造が主流となる前は新走りだったと言うワケです。
新酒の名「銀河鉄道」届けらる/小澤克己
インパクトがありますよね。
一発勝負の句です。
飲んでみたくなります。
「」の使い方の見本です。
銀河鉄道と言う名のお酒があるなんて驚きでした。
ちなみに、銀河鉄道の夜と言うお酒もあります(笑)。
生きてあることのうれしき新酒哉/吉井勇
ノンベイはみんな新酒を楽しみにしています。
まずは、しぼりたての「初しぼり」、デスかね~。
今日も元気だ、新酒が旨い。
生きている実感、素直な句です。
杉玉をくぐり新酒の猪口受くる/藤井良子
酒蔵や大きな酒屋の軒先に、古より新酒ができた合図として杉玉が吊るされます。
青々とした杉玉は爽やかで、嬉しいお知らせの風習ですネ~、私の城下でも続いていますヨ。
旅先の酒屋さんの利酒の風景でしょうか?
あ~、新酒の時期に旅へ出たいなぁ(笑)。
強情を褒められてゐる新酒かな/高田令子
連綿と続く蔵元の新酒でしょう。
主も杜氏も何世代もブレない頑固一徹の酒造り。
見事なまでの強情さ。
日本酒好きにはたまりません。
作者は、山口青邨門下の俳人。
2016年1月14日没。
新酒酌みおのづと昭和語り出す/泉田秋硯
今、お若い方は日本酒をあまり飲まないらしい。
酎ハイ、ハイボール、スパークリングワイン、ビールがメインとか。
アルコールには炭酸が入っていなくちゃ派が多いわけだ。
日本酒を飲んで昭和を語りだすのは、オジサン、いやいや、お爺さんなのだ。
作者は大正十五年生まれ・・・昭和も遠くなった。
下戸ながら二杯を越の新走り/品川鈴子
越のとあるので、新潟であろうと(笑)。
新潟を含む北陸地方が「越の国」と呼ばれるからヤヤコシイ。
福井は越前、富山は越中、新潟は越後・・・ま、いんだけども(笑)。
下戸でも飲む旨さ?なのであります。
と、なると、女性にも飲みやすい越乃寒梅あたりかなぁ⇐私見です(笑)。
新酒ちびりあとはいつもの酒ぐびり/布川直幸
わかるわかる。
とりあえず新酒、そして違いを確かめる。
酒飲みとはそういうものであります。
蔵元にもよりますが、新走り以外の新酒は、大きく味が変わらないようにブレンドする事もあるとか。
作者は酒豪でしょうね、喉を鳴らして飲むタイプでは。
妻は下戸料理に新酒惜しみなく/大久保白村
これもまた酒飲みの句ですね。
おいおい、新酒だぞ~とは言えないのであります。
あんまり文句を言うと、お銚子の本数を減らされる(笑)。
あ~、新酒も料理酒も一緒にしやがって・・・と心の嘆き。
ふるさとの川の名に酔ふ新酒かな/山田正子
私の地元であれば、信濃川と言う日本酒がある。
作者の故郷はどこなのだろうか?
たまさかの酒宴で故郷の酒が出てきたのだろうか。
懐かしい地酒に酔い、想い出にも酔い痴れた夜なのです。
饒舌と寡黙の二人新酒酌む/石川賢吾
親友とはこんな感じかも知れない。
二十年以上も前に逝った男は寡黙だった。
しかし、相手が何を思ってるかは、だいたいわかる(笑)。
酒が好きだった親友。
日本酒を飲むたびにおまえを想い出す。
若い時、まだカラオケが普及していない時代。
クラブでギター伴奏のバイトをしました。
クラブのオーナーが美空ひばりのファン。
【悲しい酒】をクラシックギターで弾かされました。
でも、なかなか良いバイトでありました。
一回五千円もくれたんですよ~。

ひとり酒場で~飲む酒は~別れ涙の味がする~♪

私の地元には、酒蔵が二つもアルんですヨ~、ありがたやぁ~。


他、秋と冬の季語で自由題。
締切は十一月二十九日です。
百舌(鵙)・その一。
モズ鳴けど今日が昔になりきれず/谷川俊水(谷川俊太郎)

昨日(10/27)、鵙の声を聴きに行きました。
秋を告げる鳥、鵙へのご挨拶(笑)。
とても遅くなっちゃいましたけれどもね。
私の周辺で鵙は鳴いていません。
鵙、秋の季語。
漢字では、百舌・百舌鳥・伯労鳥、とも書く。
傍題、鵙の贄・鵙日和・鵙の晴・鵙猛る・鵙の声・鵙の高音、など。

え~、昨日の話の続きです。
鴨と白鳥の池を過ぎて雑木林へ歩きはじめたら・・・。

即、聴こえてきましたよ、鵙の高音。
「キーキー、キリキリキリ」
実はかなり不安だったんですよね。
声を判別できるかどうかを・・・、杞憂に終わりました。
だって、鵙しか鳴いていませんでしたからね(笑)。
ちなみに鵙の高音はコチラ⇒【モズの高鳴きです】
私が鵙の声を教えてもらったのは十代の時のペンションの朝。
狩谷先生のクラシックギター教室の二泊三日の合宿の時ですね。
朝鵙やギター合宿のペンションに/小栗釣月
そうそう、朝のゴルフ場でもヨク聴きましたよ。
OBを嘲笑うかに鵙高音/小栗釣月
秋の旅先で聴く鵙も良いものです。
旅心朝刊の香に鵙の声/小栗釣月

鵙、可愛いのに、肉食・・・小さな猛禽です。
ご存じの通り、鵙の早贄(はやにえ)は有名ですね。

バッタ、ミミズ、蛙、ザリガニ、蜥蜴、小魚、鼠、小鳥、なんでも刺しちゃう。
木の尖った小枝や有刺鉄線のトゲなどに、残酷に串刺しですよ。
雀だって早贄にされちゃうんですよ~怖いぃぃぃぃ。

ちょっしたホラーですわぁ~。
鵙、イギリスでは「屠殺人の鳥」と呼ばれています。
ドイツでは「絞め殺す天使」と・・・うん、的を射てますなぁ。
江戸時代、鵙が鳴く夜は死人が出ると信じられていたほどですからね~。
また、鵙はね、他の鳥の鳴き真似の天才なんですよ。
鶯の声かと紛ふけさの百舌鳥/和田祥子
ゆえに、百舌と言うのです。
二枚舌じゃなく、舌が百ってどんだけ凄いんでしょうか。
テリトリー保全のこの時期は、マネッコはしないと言われています。
しかし、ソラの人のトコの鵙はマネッコするんだそうですよ。
定説ほど当てならないモノはアリマセン(笑)。
百舌の空心を羽根にしてしまふ/天野きく江

白鳥は10羽もいたかなぁ。
田圃のレストランにご出張だったかも(笑)。
鵙その二は、十月三十日。
古舘曹人の命日⇒10/28・本日・【古舘曹人(ふるたちそうじん)】の命日。
甘干。
甘干に軒も余さず詩仙堂/松瀬青々

京都の詩仙堂の秋の風景を詠んだ。
大正時代頃かなぁ~、今、干柿はしてない様子ですね。
甘干は、あまぼし、と読む。
いわゆる柿を吊す事、干柿ですね。
干すと甘くなるからって単純な事でしょう。
甘干へ東山から雀蜂/飴山實
甘干に西風受くる瑞林寺/小栗釣月
美濃加茂市蜂屋町。
室町時代に創建された瑞林寺という禅寺があります。


この瑞林寺、室町幕府に蜂屋柿の干柿を献上しました。
よほど美味しかったのでしょう、「柿寺」の称号を賜ります。

え~、なぜ、蜂屋柿の話をしているのか(笑)。
この記事に、ご注目頂きたかったんですよ。
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
くんざんサンのBlog【薫さんちのビーフシチュー】こちらをクリック⇒「渋柿(蜂屋柿)を収穫した・10/24」
超美味しそうなんですよ~♪
最近では里山の農家もなかなかしませんね、干柿。
くんざんサンの干柿、なかなか良い色じゃないですか。
絶対美味しいはずです。
干柿作りのマニュアルにもなっています。
なるほど、美味しくするためにモミモミするんですね。
知らなかった。
干柿を按摩のごとく揉みにけり/小栗釣月
二十ほど吊るし二人の柿日和/小栗釣月

干柿をくれろくれろと地蔵様/小栗釣月
昔はすべて渋柿だったので、渋を抜いて食べました。
渋を抜く方法は、まず、醂す(さわす)事。
「アルコール脱渋」ですね、昔は度数の高い焼酎を使ったようです。
今は、ウイスキー・ブランデー・ホワイトリカーなども使用しますね、35℃とか。
酒樽に入れて一週間ほど冷所で寝かせて完成・・・これを樽柿と呼びました。
もう一つの方法は、干す事、吊るし柿・干し柿。
元祖、ジャパニーズスイーツ(笑)。
干柿は大昔から甘味の代表ですヨ。
砂糖のない時代には削り取って甘味料としても使用しました。
ゆえに、柿の甘味が昔の和菓子の甘さの基準になったのであります。
甘柿の登場は記録によると鎌倉時代ですね。
渋柿の突然変異で甘柿が誕生したとの説が有力です。


干柿・甘干、秋の季語。
他、吊し柿・釣柿・串柿・柿干す・柿簾・白柿・枯露柿(ころがき)、など。
最近は柿を食べた事が無い若者が多いですね。
わざわざ柿を食べなくても美味しいモノはたくさんあるんでしょうけども(笑)。
食も文化であります。
甘干の洛陽ふつと熟すかな/小栗釣月
老夫婦仲睦まじく柿簾/小栗釣月

柿干してけふのひとり居雲もなし/水原秋櫻子
干柿の暖簾が黒く甘くなる/山口誓子

干柿や同じ日向に猫がゐて/榎本虎山
干柿や猫うら返る日の光/芝尚子

真つ先に日の差す本家柿を干す/藤井佐和子
干柿を少年の瞳(め)が見つめけり/小栗釣月

湯の宿の軒の干柿ゆうらゆら/小栗釣月
本日、吉田松陰の命日⇒旧暦・十月二十七日・【吉田松陰】の命日。