一月尽。
令和五年(2023年)一月、【俳句愛好会・幹】今月の句、落掌致しました。
寒波・・・まだまだ続きます。
もう雪はタクサンですよね~。
毎日毎日、除雪車がフル稼働しています。
今日(1/30)は、午前零時半頃来ましたよ。
有難いのですが、おちおち寝てられません(笑)。
連衆の皆さんのトコは被害はありませんでしたか?
今後は、落雪、雪崩などにもご注意下さいマセ。
え~、もうすぐ立春(2/4)です。
歳時記のアル人は『春』に持ち替えましょうネ。
そして、先駆けて春の季語に挑戦して下さいマセ。
さて、今月の俳句愛好会『幹』の兼題は、新年の季語、『門松』でした。
他、冬と新年の季語で自由題。

投稿いただいた会員の皆さんへの、添削&アドバイスは随時。
会報はニ月十三日ごろまで送付します。
尚、次回の兼題は、新しい春の季語、『春一番』とします。

早春に吹く風が「春一番」。

正確には、立春から春分頃までに吹く南寄りの強風を言います。

「春一番」・・・江戸時代に、この言葉は庶民には知られていませんでした。
長崎県壱岐エリアに昔からある漁師言葉だったのですネ。
古くは、【春一】とだけ呼ばれていた時期もあるらしいのです。

それが良く知られるようになったのは、民俗学者、宮本常市氏の御陰であります。
宮本氏が壱岐エリアに研究の為に訪れて、「春一番」に遭遇し世間に紹介したからなのだそうであります。

昭和三十四年(1959年)の事だそうで・・・私はまだ生まれていません(笑)。

その後、昭和三十八年(1963年)頃からメデアで頻繁に使われるようになります。
な・の・で・季語としては非常に新しいモノなのです。
マスコミが作った季語と言っても良いかな。
「春一番」、あのキャンディーズの暖かい陽気なイメージが普通です。

しかぁぁぁし、日本海側では、それに伴いフェーン現象が起きちゃうんですよ。
ゆえに、雪崩や洪水などを誘発するので要注意なのでありまぁぁぁす。
では、例句。

春一番武蔵野の池波あげて/水原秋桜子
春らしく躍動的な一句。
まるでデジカメで撮ったようなリアル。
客観写生句の見本ですね。
波の飛沫の玉、頬を打つ風、そして春の匂いまで感じます。
春一番競馬新聞空を行く/水原春郎(はるお)
こちらは、水原秋桜子のご長男。
父と同じく医学の道に進み、1984年父の俳誌「馬酔木」の主宰を継承しました。
2011年主宰を長女の徳田千鶴子に譲り名誉主宰・・・後、2016年没。
この超リアルさは父親譲りでしょうか。
競馬新聞(本当は違う新聞だったかも)だけに、あっと言う間に天空へと消え去ったか(笑)。
ユーモアに加えとても勢いがあり季語がビシッと立っています。
島の鳥船に来てをり春一番/中戸川朝人
この作者は長崎県壱岐に行ったのではないでしょうか。
そして実際に船に乗り地元の漁師と共に体感したのでは?
鳥が強い風から逃げて船で休んでいるのでしょう、それはいつもの事なのでしょうね。
作者は鳥に寄り添い春の訪れ喜んでいますね。
あいまいなをとこを捨てる春一番/田口風子
これは辛辣だ。
春一番の強風に背中をおされ腐れ縁に見切りをつけた。
『私の家よ、出て行って』
捨てると言うからには同居していた男を追い出したんでしょうなぁ(笑)。
をとこヨ、メゲルナ、春の陽気で拾う神もある・・・かも(笑)。
にんげんを洗って干して春一番/川島由紀子
穏やかな春の陽の下、洗濯物を干す喜びを独身の私は知っています(笑)。
冬の鬱屈が溜まった心身を洗って、太陽の下で丸干ししたくなりますよね。
誰もが同意する、わかるわかるの、楽しい一句。
春一番松ボックリが地を走る/齋部干里
春一番に俳人はいろいろなモノを走らせます。
普通は天空に・・・その方が派手だし描きやすい。
松ボックリは秋の季語・・・落葉と一緒に雪に埋もれていたんでしょうね。
何かの象徴のように感じる松ボックリが良いです。
灯台へ春一番の浪攻める/伊東和子
私の地元ではこの感じかなぁ。
関東の優しい風は初夏まで待たなければいけません。
日本海では初春の波はまだまだ荒いのです。
毎年この時期に波に呑まれる釣り人は多いですね。
春一番大きく開く旅鞄/矢野百合子
春一番が旅立ちの合図となったか。
旅行ではなく旅・・・、た・び・がヨイ。
春一番には旅の誘惑がある。
長い楽しい旅になりそうな予感。

他、なるべく春の季語で自由題。
締切はニ月二十七日です。
会員以外の方の投稿も大歓迎。
鍵コメやメッセージにて送って頂ければ良いです。
再掲・1/29・Sara Teasdale (サラ・ティーズデール) の命日。
アメリカの女性詩人。
サラ・ティーズデール。

1884年8月8日~1933年1月29日
クリスティーナ・ロセッティ から多大なる影響を受けた。
詩集、『Love Songs』は、あまりにも有名。
睡眠薬による自殺。
死後、『Strange Victory』が刊行された。
詩集一覧。
『Sonnets to Duse and Other Poems』 (1907)
『Helen of Troy and Other Poems』 (1911)
『Love Songs』 (1917)
『Flame and Shadow』 (1920)
『Dark of the Moon』 (1926)
『Stars To-night』 (1930)
『Strange Victory』 (1933)
では、ココで、サラの詩を、さえき奎氏の超訳にてお楽しみ頂きたい。
"The Solitary" 「ひとりでいい」
サラ・ティーズデール・超訳/さえき奎
私は歳を経るとともに心の豊かな人間になった
若かった頃にくらべて
自分を抑え込んでみんなに合わせたり
自分の思いを声高に主張することもなくなった
出逢いと別れは私にとって何でもないこと
私に自我と揺るぎない信念と
夏の夜の丘に登って行く脚力があるなら
その上に広がる満天の星を仰ぎ見るから
私を他 にばかり気を遣っている人間だと思うならそれでもよい
いつも人の目を気にしているのだと思われてもかまわない
孤独であろうとも、それが彼らの自尊心を満たすのだとしても何だというの
花が花であるように、石が石であるように、私は私だ
"Stars" 「星たち」
サラ・ティーズデール・超訳/さえき奎
夜独りで
暗い丘の上の
林のなかで
松の香りと静寂に包まれて
仰ぎ見る
満天の星は
白と黄
淡い赤
永遠に
飽くことなき
無数に瞬く
心の灯が
巨大な山のような
天空のドームを
堂々と粛々と
進んでゆくのを見守る
そんな私は
この神々しさに
満ちあふれる光景の
至福の立会人だ
"Winter Stars" 「冬の星座」
サラ・ティーズデール・超訳/さえき奎
独りで夜の空へ飛び立つと
海の彼方から熱い血潮が満ちて来て
私の魂の翼を濡らしてしまった
悲しみ途方にくれて
雪の上に揺れる自分の影から
目を空へと転じると
古より変わらぬ光を放つオリオンが見えた
子供の頃の冬の夜、家の窓から
夢見心地で東の空に眺めた星も
街灯の上に輝くオリオンだった
歳月は流れ、夢は破れ、青春が過ぎ去ろうとも
数多の戦に人々が疲れ、心を傷めようとも
万物は移ろいの中で美しい星となり
東の御空に抱かれて永遠に輝き続ける
興味をもたれた方は、是非、詩集を・・・。
Mr.Saeki Special Thanks♪
ふぐり落し。
おづおづとふぐり落して真の闇/加古宗也

ちょっと先の節分(2/3)の夜の厄払のお話なんだけど、ね。
変った晩冬の季語・・・【ふぐり落し】
あ、男子限定。
『厄払』の傍題です。
穿いていた?褌(ふんどし)をですね。
真夜中に神社に落とすんですと(笑)。
特殊な厄落の方法なのですヨ。
帰りの下半身があまりに無防備ですなぁ(笑)。

は?褌を?
なんのこっちゃ?ですよね(笑)。
え~、
私は経験がありません。
また、実際に見たことも無いのですが・・・。
歳時記で初めて知った次第です。
さて、【ふぐり落し】とは?
厄落としの習わしの一つですね。
大厄(四十二歳)の男が、節分(2/3)の夜、氏神様への参詣時。
人に見つからないように、己の褌を神社に落してくる風習?です(笑)。

現在、褌と言ったら、神事やお祭・・・。
そして大相撲、こんな場面でしか見れませんね。

あ、失礼、相撲の場合、褌ではなく、廻しですね。
下着はいまだに褌だって人もいるとかいないとか(笑)。
江戸時代では、今の渋谷のスクランブル交差点の様な人が大勢行き交うトコで、やはり節分の夜に、人に気づかれないように褌を落として厄落としをしたらしいのですが・・・本当かなぁ(笑)。
ちなみに女性は櫛を落とす風習があったそうです。

我が国の神々も心が広いと言うか、いい加減と言うか、懐が深すぎる(笑)。
ご利益のアル神社程、昔は褌だらけになったのかと思うと・・・朝、起きたくなかったでしょうね。
また、それを拾い集めて・・・宮司が護摩?で焚いたのかと思うと滑稽ですらあります。
貴方、まさか、いま穿いている下着を落とそうと思ってはいませんよね。
駄目ですよ~、絶対駄目ですよ~、今は、犯罪になりますよぅぅぅぅぅ♪

ふぐり落し赤き顔して戻りきし/滝沢伊代次
潦(にわたずみ)とびとびふぐり落しけり/細川加賀
ウーロン茶さげ来しふぐり落しかな/木野本加寿江
女房を従へふぐり落しかな/土井田晩聖

ふぐり落してめでたさの齢かな/水野恒彦
達磨落しふぐり落し蛸薬師/延広禎一
リストラをまとものふぐり落しかな/石田小坡
酩酊しふぐり落としにいざゆかん/小栗釣月

冬深し、冬深む+實朝忌。
冬深しひかりを組みて枝と幹/高島茂

冬深し、冬深む・・・晩冬の季語、もうすぐ、立春(2/4)デス。
冬の季語は使えるのは節分(2/3)迄・・・。

冬深む長きわが影連れもして/保坂加津夫
闇ひとつ靴音一つ冬深む/林裕子
冬深む街を荒野と思ひけり/重高涌子
冬深む異界に誘ふ猫のいて/小栗釣月


小指から土になる音冬深し/わたなべじゅんこ
冬深し山の音する生き柱/吉永すみれ
冬深し赤きワインの湯に浸る/城戸愛子
冬深し枝雀の十八番ながら聴き/小栗釣月

旧暦一月二十七日・・・本日、實朝忌。
詳しくはコチラ→旧暦・建保七年一月二十七日・實朝(さねとも)忌。
なかなか寒気が去ってくれませんね。
毎日、毎日、除雪車がフル稼働ですよ。
春が待ち遠しいなぁ。