白魚(しらうお)。
月もおぼろに白魚の、篝もかすむ春の空、冷てえ風も微酔に、心持よくうかうかと、浮かれ烏のただ一羽、塒(ねぐら)へ帰る川端で・・・以下、省略・・・(笑)。
明ぼの(曙)やしら魚しろきこと一寸/松尾芭蕉
白魚をふるひ寄せたる四つ手(四ツ手網漁)かな/宝井其角
江戸期の百科事典?的、名著、喜田川守貞の『守貞謾稿』によりますと・・・。

「白魚は江戸隅田川の名物とす。細かき網をもってすくひとる。夜は篝してこれを漁(すなど)る。」と、あります。
芭蕉も其角も食し、白魚漁をみたのでしょう。

ただ、白魚は一尾ずつ数えて売買したとのこと。
ならば白魚は高級魚だったと言う事になりますね。

白魚や椀の中にも角田川(隅田川)/正岡子規

白魚や生けるしるしの身を透かせ/鈴木真砂女

隅田川の白魚漁はいつ終わったのでしょうか?
ある調査によると昭和二十年頃までは生息していたようです。
現在は絶滅した白魚を復活させるべく運動も起こっています。

春の季語、【白魚】。
傍題、しらお、しろお、王余魚、銀魚、白魚網、白魚舟、白魚汲む、白魚火、などなど。
別名、春告魚とも呼ばれる春を代表する味覚のひとつですネ。
今年の大河の主人公の家康は特に白魚を好んだらしいですよ。
佃島で白魚漁をさせたのが築地魚河岸のルーツなんだそうです。
また、額に薄く見える紋様が葵の御紋にそっくりなので殿様魚とも言われております。

わかりますかね、葵の御紋(笑)。
白魚の御紋を拝しかっ喰らふ/小栗釣月
池波正太郎の小説にも常連のお魚ですね、沢山の料理方法があります。
成長しても白魚は白魚、美しく透き通る姿のまま春に遡上して、産卵し一生を終える魚なのです。
白魚の哀しきまでに透き通る/池田光子
白魚の朝日透きたる命かな/野中亮介
しらうをは海のいろして生まれけり/高橋順子
生のうちは半透明ですが、蒸したり煮たりすると真っ白になるので白魚と言うのですぅぅぅぅ。
また、踊り喰いのしらうおは、本来は素魚(しろうお)であり、ハゼ科の別種なのでご注意を・・・。
しかし、踊り食いのイメージぽい句も多いんだよね~、どうなんだろなぁ~。
地域によっては白魚の別種である素魚も「シラウオ」と呼ばれることがあるのです。
それがこの二種類の魚の違いを一層わかりにくくしているのですよね~。
再度確認すると、シラウオは「白魚」で、シラウオ科・シロウオは「素魚」で、ハゼ科。
種類が全く異なる魚です、ちなみに、シラス(イワシの稚魚)も違う仲間ですよ~。

白魚のさかなたること略しけり/中原道夫
白魚の命ひしめく光あり/木原不二夫
白魚やまだ水紋のつづきゐる/豊田都峰
白魚のいづくともなく苦かりき/田中裕明
しら魚や水もつまめばつままるる/鶴海一漁
白魚や不埒の様に揚げらるる/小栗釣月

掻揚。

卵とじ。

私の地元でも小学生の頃までは獲れたんですよ。