九月三日~七十二候・その四十二[禾乃登]
稲無限不意に涙の堰を切る/渡辺白泉
昭和三十年の作品。
戦後の豊饒と平和、そして餓死した戦中の人々を想い涙したのだろう。
稲が実ると言う事は、平和であると言う事なのだ。
昨日こそ早苗とりしかいつの間に稲葉そよぎて秋風の吹く/詠み人知らず
一郷の重くなるほど稲穂垂れ/水谷靖

二十四節気、処暑、末候、禾乃登(こくものすなわちみのる)。
稲が実り、穂を垂らす頃、実りの秋の到来です。
古の人々は、穀物豊穣の時期を一番の幸せに感じていたのではないでしょうか?
[禾]は、稲が穂を垂れている様子の象形文字。
[登]は、実る、成長・成熟の意味もあります。
私の地元では早稲の収穫が始まりました。
コシヒカリは中旬かなぁ~。

一里行けば一里吹くなり稲の風/夏目漱石
わがこころ稲の穂波にただよへり/山口青邨
稲稔りゆつくり曇る山の国/廣瀬直人
神々のむつかしき名や稲穂垂る./土橋柚花
風の無き朝は稲穂の香に咽せる/小栗釣月

ちなみに、神道での食事の作法は、合掌はせず、一拝一拍手。
そして、「いただきます」の前に、歌を捧げます。
「たなつもの百(もも)の木草も天照す日の大神のめぐみえてこそ」
さらに、「ごちそうさま」の前にも、歌を捧げます。
「朝よひに物食ふごとに豊受(とようけ)の神のめぐみを思へ世の人」
ご存知かと思いますが、天照(あまてら)す日(ひ)の大神(おおかみ)=太陽を司る神道の絶対的な女神、皇祖神、天照大神であり、豊受の神=豊受大神は、伊勢神宮の「外宮」に祀られている五穀をつかさどる女神で、天照大神の食事のお世話もしています。
異常な酷暑と水不足が続きました。
今年のお米、全国レベルでどうなのでしょうか?
心配であります。