蛤。
蛤のすまし汁・・・旬を食すのは、贅沢の極み。

今ぞ知る二見の浦の蛤を貝合とておほふなりけり/ 西行法師
蛤のふたみにわかれ行く秋ぞ/松尾芭蕉
蛤のひらけば椀にあまりけり/水原秋櫻子

さて、蛤を代表とスル二枚貝は、他のものとは合わないことから、
末永い幸せを願う夫婦の縁に重ねて、婚礼や雛の節句などの細工、
貝合せ(平安時代から伝わる日本の遊び)や、薬・化粧入れにも用いられた。

蛤汁のほどのにごりのよかりけり/能村登四郎
シゴトノハナシ蛤のすましかな/常田創
はまぐりのとうとう白状せぬ一個/村田冨美子
白濁の蛤汁や宴半ば/宇治重郎
蛤汁のにごり礁に雨降れり/中尾杏子
蛤をおさへて椀を傾けし/須原和男
蛤汁の春の濁りを啜るなり/小林鱒一
汐とばす蛤すぐに売り切れし/池田かよ
蛤を焼き夕ぐれを愉しめり/太田土男
蛤の法螺吹くままに焼かれけり/小栗釣月

蛤や鳴かねば舌をちょんぎるぞ/小栗釣月
*秋の季語・雀海中に入って蛤となる*