虫時雨Ⅰ。

「虫時雨」は、秋の代表的な季語です。
私の地元では一週間前ほどから「虫時雨」です。
虫時雨泣きたい夜は泣けばよい/小栗釣月
「虫時雨」と言う季語はカナリ新しい季語のです。
大正時代から使われ始めたようなのであります。
一時は廃れてしまい、全然使われなくなりましたが、戦後復活したようです。

鉦叩より始まりし虫時雨 /谷本春代
コツコツと我が靴音と虫時雨 /佐竹千代
二人居の黙の深まる虫時雨 /吉沢陽子
夜の旗のしめりて垂れぬ虫時雨//夏井いつき
我が背中に黄泉の近づく虫時雨/小栗釣月

鴨野長明は、松風に『秋風楽』を、水の音に秘曲『流泉』を琵琶で奏でたらしい。
また、記録にはありませんが、早朝や宵闇には虫時雨に合わせて琵琶を奏でたのではないかと思いを馳せるのです。
長明を偲びつ暫し虫時雨/小栗釣月
長明の琵琶とおぼしき虫時雨/小栗釣月

もし、満沙弥(まんしゃみ)の歌による「跡の白波(しらなみ)」に身をよする朝には、
岡の屋(宇治川岸)に行かふ舟をながめて満沙弥が風情をぬすみ、
もし、桂の風、葉を鳴らす夕べには、白楽天の漢詩、潯陽(じんよう)の江をおもひやりて、
源都督(げんととく=源経信・琵琶の名手)のながれをならふ。
もし、あまり興あれば、しばしば松の響きに雅楽「秋風楽」をたぐへ、
水の音に琵琶の名曲の「流泉」をあやつる。
芸はこれ拙(つたな)けれども、人の耳をよろこばしめんとにはあらず。
ひとり調べ、ひとり詠じて、みづから情(こころ)を養ふばかりなり。
鴨長明著、方丈記より。
「世の中を何にたとへむ朝ぼらけ漕ぎゆく舟のあとのしら浪」沙彌満誓(満沙弥)

長明の愛器は、ハンドメイドだったようです。
しかし、琵琶作るとはなんとも器用なお人…。
しかも、改造して継ぎ琵琶にしたようです。
竿の部分を取りはずし可能にして持ち運びを簡単にしたのです。
さすがでありますネ~、万事においてそつがないデス。

今夜は上弦の月、しかも晴れる…、虫たちもよく鳴くと思うよ。